〜「ごめんね」を「ありがとう」に変える仕組みづくり。社員の“声”から生まれる、東洋ホイストの誰もが活躍するワークスタイル〜

東洋ホイスト株式会社は、工場やごみ処理場などで使われる「ホイスト(巻き上げ機)」やクレーンの専門メーカーです。特にごみ処理施設などで活躍する環境クレーンの分野では、約40%という非常に高い国内シェアを誇ります。「製造業」「クレーン」と聞くと、昔ながらの男性社会のイメージを抱くかもしれません。事実、8年前は女性社員がわずか4名でした。しかし、現社長の就任を機に、社内は劇的に変化し、この8年で女性社員は34名(全社員の約35%)へと大幅に増加しました。その背景にあったのは、「このままでは会社の成長はない」という経営トップの強い危機感と「覚悟」、そして社員の“声”に徹底して耳を傾けて生み出された制度の数々でした。今回は、その背景と具体的な取り組み、「想い」について、東谷社長と、社長と共に改革を進めてきた吉永室長、そして現場で活躍する上薗(ウエゾノ)さん にお話を伺いました。

〜「このままでは会社の成長はない。」ダイバーシティの推進が当たり前の世界からきた社長の危機感と、社員とともに風土を変えた「覚悟」〜

代表取締役社長 東谷さん

【女性活躍推進の取り組みを始めたきっかけをお伺いします。】
東谷社長:
8年前に福岡に戻ってきたのですが、それまでは先代の社長である父が経営していました。私は大学から関東におり、卒業して商社の営業を20年やっていたのですが、その会社ではダイバーシティを推進していました。女性の活躍も当たり前で、営業部長をしていた時には、部下の多くが女性でした。女性ならではの非常にきめ細やかな営業のおかげで顧客との関係も大変良好で、そんな男女関わらず誰もが活躍することが当たり前の世界にいました。その感覚でこちらに戻ってきて、会社を見ると女性が4名しかおらず、その時に「うちの会社、今後成長はないな」と思い、まずは女性活躍が第一だということで、取り組みを始めました。
【実際、この8年間で4名から34名へと女性社員数が増えていますね。女性社員が増えたことで、何か変化したことはありますか?】
東谷社長: 
まず、社内の雰囲気が1番変わりました。先代の時代はどちらかというとトップダウンだったのですが、私はそれが苦手で、トップダウンをやめて、社員の皆さんの声を聞くようにしました。そうすると、特に女性の方が声を出してくれて、大きく社内の雰囲気が変わりました。それが1番良いことだったんじゃないかなと思います。お客様の声も変わり、『小さなことにも気づく、きめ細かい会社になりましたね。』という声が聞こえてくるようになりました。多様な感性や視点が会社内に広がったおかげだと考えています。

〜「ごめんね」を「ありがとう」に変える仕組み。社員の声から生まれた「ペアワーク」と、心理的負担を軽くする「パートナー制度」〜

女性活躍推進センター室長 吉永さん

【「女性活躍推進センター室」についてお伺します。】
東谷社長:
これからもっと女性が増えて活躍するために、女性が気軽に相談できる相談室を開設しました。また、キャリア形成・キャリアアップをイメージしやすい環境を整えようと思い、2023年に女性活躍推進センター室を作りました。当社の女性活躍のモデルケースとして吉永に室長をしてもらい、各部署にメンバーを置いて、色々な意見を聞くという取り組みを始めました。広く社員の意見を聞きながら、生理休暇や子どものイベントごとに取得できるメモリアル休暇、ベビーシッター制度などを作って、女性の様々なライフステージに寄り添う、働きやすい環境・制度をまず作っていきました。

【様々な制度の中に、子連れで出勤できる「ペアワーク」という取り組みがあると伺いました。】
東谷社長: 
女性活躍推進センター室の取り組みで、社員の皆さんの声を聞いていたら、「子どもと離れている時に何かあったら怖い」「保育園から呼び出しがあると、すぐにお迎えに行かなければならないが、仕事もキリのいいところまでしたい」という意見がありました。その意見を参考に、4階にあるラウンジスペースに子どもの側で仕事ができるスペースを作り、ペアワーク制度としてその場所を利用できるようにしました。子どもにはサークルのなかで遊んでもらって、隣で仕事をしていただくことで、安心して仕事ができればと考えています。

【利用されている方のご感想はいかがですか。】
東谷社長:
ある男性の方は、奥様が久留米市で働いていて、お子さんが新宮の保育園にいるのですが、何かあっても、当社の社員が保育園まで迎えに行き、会社に戻ってくることができるので、奥様は安心しているということでした。
吉永室長: 
その方が制度を利用された時の話ですが、サークル横のテーブルで仕事をやるのかと思っていたのですが、サークルに子どもと一緒に入って、自分の膝でノートパソコンを開きながら、赤ちゃんがサークル内をハイハイしているという感じでした。自由な形で活用してもらっています。

【もう一つ気になったのが「パートナー制度」です。子育て中の方と、そうではない他の方がパートナーを組んで仕事の補助をする制度だと伺いましたが、具体的な取り組みを教えてください。】
東谷社長:
制度を導入しようとした背景として、子育てをしている方は家のことで早く帰らなければいけない場合や、子どものことで呼び出しがあれば帰らなければいけない場合があり、それ以外の方に皺寄せがきてしまう、そんな状況が実際ある中で、子育てしている人もそうでない人も、気持ちよく社員同士が送り出して迎え入れる環境を作ろうと思い、パートナー制度を導入しました。

【子育て中の方と組むパートナーになる方は仕事が増えることにもなりそうですが、その点はどうされているのでしょうか。】
東谷社長:
パートナーになる方には、給料を上乗せし、先に手当をお支払いしています。実際に制度を利用するかしないかは、子どもさんの体調などによるので、どうなるのかはわからないのですが、初めに手当を渡しておくことで、お願いする側、サポートする側、両方の心理的な負担を減らすことができるのではないかと考えています。
吉永室長:
保育園や学校から呼ばれたから帰らなきゃいけない、そんな時に「ごめんね、ごめんね」と悪いなと思い、謝りながらお迎えに行くより、その悪いな、迷惑をかけているなという心の負担を軽くし、笑顔でお迎えに行ってもらって、そして次に出勤した時も気持ちよく働き、パフォーマンスを発揮できる環境を作りたい、という思いが社長にありました。

【パートナー制度を利用されている方々の感想はいかがでしょうか。】
吉永室長:
実際、パートナーを組む方々はWin=Winの関係が出来上がっていて、すごく活き活きとしています。サポートをする側としても、「頼られている」ことがやりがいにもつながっているようです。
異なる部署の方ともパートナーを組むケースもあり、例えば、資材部にいる子育て中の社員が技術部の社員とパートナーを組むというケースもあります。通常ですと、異なる部署の仕事になるので難しいことかもしれませんが、弊社ではジョブローテーションを意識的に行っており、技術部の社員は、以前いた資材部での経験を活かしてサポートしています。意識的なジョブローテーションによって、異なる部署間でもパートナーを組むことができるので、サポートする社員の仕事の幅も、活躍の幅も広がっています。
もちろんサポートという立場なので相手の仕事を100パーセントすることはできません。『じゃあここまではやっておくね』というような取り決めをしながら、制度をうまく利用してもらっています。
制度を利用している方は、「気を遣うことなく安心して働くことができる」、サポートする側も「昔の経験が役に立って嬉しい」「役に立てることで仕事に誇りを持つことができた」などの声も聞きますし、社内の雰囲気もとてもいい方向に変わっていると感じています。
 

〜目指すのは男女関係ないフラットな会社。ライフステージに合わせた制度の更なる拡充と、更なる女性管理職登用を目指して〜

【今後さらに、働きやすい環境を作るための課題や、将来見据えていることがあればお伺いしたいです。】
東谷社長: 
今後の課題は2つあります。1つ目が、女性のライフステージに合わせた制度の拡充。2つ目が、女性管理職への登用です。
1つ目の女性のライフステージに合わせた制度の拡充ですが、女性には、結婚、妊娠、出産、育児、場合によっては介護という色々なライフステージがあり、そのライフステージに合わせた制度の新設又はバージョンアップが必要だと考えています。例えば育児だと短時間勤務制度の見直しを現在行っており、今は3歳までとしていますが、ヒアリングをする中で、「小学3年生まで」や「小学6年生まであると助かる」という声も聞こえ、メリット・デメリットを調べながら小学6年生までの拡充を具体的に検討しています。
吉永室長:
「介護」というワードが出ましたが、私自身、親の介護をするステージに移っていて、そんな中、社長の計画でフレックスタイム制度を試験的に導入し、利用したのですが、それがとても助かりました。
フレックスタイムだと、7時45分に出社し16時45分に退社するのですが、その退社時間だと、両親の暮らす実家に向かう道路の交通量が18時に退社した場合と比べてすごく少なくて、運転の負担がとても軽くなったんです。おかげで、介護を終えて家に帰る時の私の身体的、精神的負担がすごく軽くなり、本来は試験的な導入だったのですが、継続していただいて現在も利用しています。
東谷社長:
2つ目の女性の管理職への登用、これが非常に難しいのですが、今後のためにも積極的に取り組んでいきたいと考えています。今は女性社員が34名になって、係長が1名で主任が8名ぐらいになったのですが、まだ、管理職になりたいという方が少ない状況です。
もちろん、その方々の生き方や考え方があるとは思うのですが、やはり管理職について、わからない、その後が見えないことへの不安があるのではないかと考えています。ですので、様々な場面で判断をしてもらう権限委譲を進め、色々な経験をしてもらう機会をどんどん増やそうと取り組んでいます。その上で、「管理職が楽しいな」「自分で判断するのが楽しいな」と感じていただいて、管理職を目指して欲しいなと考えています。
まだまだ課題はありますが、いずれにしても業界の慣習に関係なく、社員の声に耳を傾けながら、男女関わらず誰もが働きやすい、誰もが活躍できる仕組みを会社の風土として作りたいと考えています。
 

〜「女性だから」を払拭したい。「現状維持は停滞」という言葉を胸に〜

資材部 上薗さん

(女性従業員インタビュー )

【現在の業務内容を教えていただけますか。】
上薗さん:
資材部に所属し、社名にもあるホイスト(巻き上げ機)の加工品を担当しています。弊社の図面を協力工場様にお渡しして制作いただく、そういったバイヤーの仕事です。
【入社の決め手は何だったのでしょうか。】
上薗さん:
元々バイヤーの仕事がしたいと思い転職活動をしていたのですが、その中で逆スカウトをしていただいて、東洋ホイストのことを知りました。調べていくと、東日本大震災の時にも、瓦礫やゴミを撤去するクレーンを収めており、この会社であれば自己の成長だけでなく、社会貢献もできるのではないかと思い、入社を決めました。

【女性が少ないと言われる製造業界で、女性ということで困ったことや、やりにくさを感じたことはありましたか。】
上薗さん:
社内は女性社員も多く、特に困ることはないのですが、男性社員と一緒に交渉の場に行くと、先方のご担当者様が男性社員の方しか見ないことがあるんです。女性の私はアシスタントだと思われがちですが、実際話しているうちに「こちらの女性もお話できるんだな」という感じで接してくださるようにはなりますので、仕事の姿勢で示していくことが大切だと思います。
また、私の仕事が、昔ながらの町工場の職人さんとお話をする立場なので、やはり最初のうちは、まだまだ勉強不足で、物がわからなかったり、用語がわからずお話が通じなかったりという部分で、ご迷惑をおかけしたことはありました。「女性だから」という障壁を感じたこともありましたが、自分自身が学び、知識をつけていくことで、今ではとても良好な関係でお付き合いさせていただいております。
 

【社内の働きやすさという点はいかがでしょうか。】
上薗さん:
私が所属している資材部のバイヤーの9割が平均年齢20代の女性社員になるので、若い社員がどんどん育ち、活躍している環境になります。部署内の雰囲気もすごくアットホームですね。
また、現在も育休中の女性社員が結構いるのですが、会社が定期的に連絡を取っていて、いつでも戻ってこられる体制を整えているんです。「育児中のお母さんは社会から離れ孤立を感じることが多い」と聞く中で、会社からコンタクトを取ることで、かなり安心感があるのではないかと思います。
そういった会社の体制があるので、現在働いている多くの若い女性社員にとっても、辞めることなく働き続けることがイメージしやすいのではないかと感じています。
私の部署にも10月に産休に入った先輩がいらっしゃいまして、その方の業務の引き継ぎや会社全体との連絡調整も、部長を含め、先輩方と話し合いながら、きちんと調整を図れる環境なので、不安は基本的には無いです。自分がそのステージになっても、安心して産休に入れる、後任に任せられる環境があるのではないかなと思います。

【働くときに大切にしていること、これからのビジョンについてお伺いいたします。】
上薗さん:
弊社の社長がよく『現状維持は後退だ』と言っておりまして、常により良い方法がないかを考え、資材部のバイヤーという立場として、より仕入れ率を下げるために何か別の方法がないか、加工法であったり、他の業者さんに依頼することで改善できないかなど、日々模索しながら仕事を進めています。
そういう姿勢で仕事をしていくことによって、製造業界にまだ残る「女性だから」という価値観を払拭できるような仕事ぶりをして、より豊かな人生に繋げていけたらと思いながら、日々働いています。
現在、後輩も多く入ってきている中で、私自身中間層になってきています。先輩たちを支えていきながらも、みんなが働きやすい環境を、会社全体として見ていきながら、仕事を進めていけたらいいなと考えています。
 

【聞き手所感】

8年間で女性比率を劇的に高めたスピード感もさることながら、その一つひとつの施策が、非常に深く、多層的に設計されていることに感銘を受けました。特に「パートナー制度」は、子育て社員の「ごめんね」という心理的負担を解消するだけでなく、「報酬の先払い」というサポート側の納得感まで組み込まれた、実に気持ちの良い仕組みだと思います。これこそ、東谷社長が前職で培った「仕組みさえ作れば、業界は関係ない」という信念の表れだと感じました。
「管理職になりたい人が少ない」 という悩みは、多くの企業が直面するリアルな課題です。しかし、そこに対しても「見えない不安を払拭する」 ために権限移譲や色々な経験を積むという具体的な手を打ち、試行錯誤する姿勢にも、製造業の未来を願う、社長の覚悟を感じました。
貴重な時間をいただきありがとうございました。

会社概要

東洋ホイスト株式会社

粕屋郡新宮町下府2-11-1

代表取締役社長 東谷卓哉

ホームページ(外部リンク)

◇◇見える化登録情報はこちらをご覧ください◇◇

一覧に戻る